シーケンシャル咬合について
咬み合わせに問題を抱えている方へ
咬み合わせはとても難易度の高い治療です。 その理由として、大学の教育で「咬合」について学ぶ機会が無いからです。 まだまだ日本においては、咬合治療に関してコンセンサスが取れていないため、明確な治療ガイドラインがありません。
う蝕(虫歯)や歯周病など、目に見える疾患ではないことから概念的なものであると捉えられていることも、咬合治療のコンセンサスが取れない状況に繋がっているのかもしれません。
当院においても、
・歯がぐらつく
・奥歯が痛い
など、う蝕(虫歯)や歯周病の症状と思われる主訴の患者さんを拝見し、検査を進めていくと、咬み合わせが根本的な原因となって、ぐらつきや痛みが発生していることがわかります。
それだけ、患者さんご自身でも気付かない。歯科に行かれても咬合に対する知識がまだまだ知れ渡っていないため、見過ごされてしまうケースがあります。 ヨシダ歯科では見えない問題である咬合の専門家として、隠れた問題を顕在化させるための「シークエンシャル咬合」と呼ばれる理論を用いた治療を行います。
シークエンシャル咬合とは?
本来人間が持っている自然で良い咬み合わせをシークエンシャル咬合と定義しています。この咬合理論はウィーン大学で教鞭をとっていたルドルフ・スラビチェック先生が立役者となって発達した咬合理論です。 ウィーンの博物館にあった約2千人の頭蓋骨を一つ一つ調査し、老人なのに沢山歯が残っている人の共通点を探し出しました。 そこで明らかになったことは、下顎の歯は犬歯手動で順番に離れていく。それがシークエンシャル咬合でした 。
シークエンシャル咬合の診断によって、快適な顎の位置が顎関節のどの部分にあるのかを発見することができます。 矯正治療後の不具合や顎関節に問題がある方でも、最適な咬み合わせがあります。その最適な咬み合わせを探す道程は、検査をすることで得られる客観的なデータ採得、分析によって導き出されます。 分析したものを治療に活かすことで、患者さん個々人に最適な咬み合わせを実現することができるのです。
シークエンシャル咬合のゴールは「良い咬み合わせ」を作ること
シークエンシャル咬合を行っている歯科に共通して言える「良い咬み合わせの条件」は、2つにまとめることができます。
良い咬み合わせの条件1:犬歯誘導ができる
犬歯誘導というのは、下顎を横にスライドさせたときに犬歯(3番)だけがしっかりと噛み合うことで、前後に少し隙間が開いている状態を指します。
ではなぜ犬歯誘導が良い咬み合わせの条件となるのでしょうか。奥歯は横の力に弱く、食事をして歯が横に揺らされ続けると、歯や歯の周辺組織を破壊していきます。
犬歯は横の力にも耐えられる強い歯であることから、左右に力がかかる場合は犬歯だけを噛み合わせることで、奥歯を守ることができます。
この関係が成立する噛み合わせが、シーケンシャル咬合(順次誘導咬合)です。人間本来持っている自然な咬み合わせに近づけることができます。
咬み合わせの条件2:4番と6番の歯が機能している
4番とは第一小臼歯のことです。 一般的な矯正治療では抜歯されてしまう歯ですが、「咬み合わせ」という観点から考えると重要な歯です。
4番の歯は、リトルーシブ・ガイダンスという機能を持っています。簡単にご説明すると、上の4番の歯の山に下の4番の歯があたり、スライディング(滑走する)しながら咀嚼をすることで、顎を前方に誘導する役割があります。
矯正治療にて咬み合わせを治す場合には、上下の4番がしっかりと治まることを目標としています。
また、6番(第一大臼歯)はリトルーシブ・ストップ(バリア)という機能を持っています。顎が後ろに下がらないようにするストッパーのような役割を持っています。
この4番と6番が連携を取り、顎関節を守っているのです。
良い咬み合わせを作る条件をお伝えさせていただきましたが、これらの条件を満たすために治療を行うことが「咬み合わせの治療である」とご理解いただけたらと思います。
良い咬み合わせを手に入れるメリット
・噛む力による歯の破折を防ぐ
・噛む力によって歯槽骨が溶かされるのを防ぐ
・顎関節症を予防する
・悪い歯ぎしりによる問題を防ぐ
(歯の摩耗、骨隆起、歯がかける・割れる、被せものが外れる、割れる)
良い咬み合わせを手に入れることは、噛む力によって歯が壊されていくことを防ぐことに繋がるため、長く噛める歯を維持することができるのです。
シークエンシャル咬合とは?
患者さんにまず知っていただきたいことは、この理論を用いて治療をすることは、対症療法的な方法ではないということです。
例としてお話します。
大型の車が通れない荒れている道路があるとします。
荒れた部分だけをキレイに舗装したとしても、道幅が広がらなければ大型の車がその道路を通ることができません。
つまり、「木を見て森を見ず」になってしまうということです。したがって、悪くなった歯に対して治療を行うだけでは根本的な改善にはなりません。大切なのは、すべての車が快適に交通するための「土台」を整えてあげなければならないのです。
「総合診断」でエビデンスに基づいた治療計画を立てる
木を見て森を見ずにならないためには、土台を整える必要があることをお伝えしましたが、では土台を整えるためには本質的な問題を発見しなければなりません。
そこで重要になるのが「総合診断」です。
当院では診断のために以下の検査を行います。
1.医療面接(問診、カウンセリング)
2.顔貌、口腔内、姿勢写真の撮影
3.顎機能検査(CADIAX)
4.フェイスボウ・模型の作製、咬合器への付着
5.レントゲン(パントモ・デンタル・セファロ)、CT
6筋触診
7.ブラキシズム検査
これらの検査を行った上で、客観的なデータ(資料)を取得します。 資料を元に分析を積み重ねることで、最終的に治療計画を立てます。
咬み合わせは、1度でバシッと「正しい咬み合わせ」がわかることは少なく、その咬み合わせで問題がないか確認する1次診断と最終的なゴールを検討する最終診断を行います。
その後、治療方法を決定して治療に入るため、一般的な歯科治療に比べて本格的な治療に移行するまでに時間を要する場合もあります。
総合歯科医による治療
咬み合わせ治療は特定の治療があるわけではありません。 良い咬み合わせを目指すために、あらゆる治療を駆使するのです。ゴールを目指すのです。
あらゆる治療を駆使するということは、歯科に必要なことを包括的に高いレベルで対応出来なければなりません。そのため「総合歯科医」が咬み合わせ治療には重要なのです。日本では標榜することはできませんが、アメリカでは「スーパーデンティスト」と呼ばれています
咬み合わせ治療をする際には、総合歯科医を選ぶようにしましょう。
咬み合わせ治療の実際
総合歯科医として、咬み合わせ治療をする方法としては大きく3つに大別されます。
・矯正治療
・補綴治療
・矯正治療+補綴治療
診断によって、ケースバイケースでの対応となりますが、最も基本となる治療が矯正治療です。
総合歯科医だからこそできる矯正治療の特徴をお伝えしたいと思います。
総合歯科医の矯正治療の特徴
・非抜歯
・非外科処置
・短期間
・非顎外装置
・顎機能や咬合を意識した診査診断
・虫歯・歯周病の治療及び補綴を考慮することができる
矯正専門歯科では抜歯を前提とした治療が多く、結果的に3〜4年程度の治療期間が必要になります。また、虫歯や歯周病、補綴の治療は矯正専門歯科では対応できません。
これらを包括的に治療することが総合歯科医の最大の特徴です。
総入れ歯で噛み合わせを再構築することもできる
総合診断は総入れ歯にも適応することができます。
歯がないということは、キャンパスに新たな絵を描くようなものです。
咬み合わせを考慮した入れ歯を作製することで、良い咬み合わせにリセットすることができます。
入れ歯で噛めない、噛む位置がわからない、なんか違うとお考えになられたら、一度ご相談下さい。
咬み合わせに困ったら当院へいらしてください
これまで紹介してきたシークエンシャル咬合ですが、客観的なデータを用いて治療計画を立てることは、まだ歯科業界でもスタンダードではありません。
局所的な問題ではなく、全体的な視点を持った上で総合的な診断、治療が本来必要なことです。
当院は客観的なデータと包括的治療で、目に見えない問題である咬み合わせ治療に向き合っていきます。