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歯周病になると歯が長く見えると聞きましたが、それはなぜですか?

2018年11月15日

大田区池上西馬込駅最寄りの歯医者さん、ヨシダ歯科です。
今回のテーマは「歯周病になると歯が長く見える理由」です。
歯周病は自覚症状が少なく、そのため「静かなる病気」とも言われています。

ただし自覚症状が全くないわけではなく、例えば歯周病の自覚症状として「歯が長く見える」があります。最も、これはあくまで歯が長く見えるのであって、実際に歯が伸びたわけではありません。ではなぜ歯周病になると歯が長く見えるのか?…今回はそれについて説明していきます。

歯肉退縮

歯周病になると歯が長く見えるのは、歯周病の進行によって歯肉退縮が起こるからです。本来歯は歯肉に埋まっており、実際には歯肉の中にも歯の一部が存在します。しかし歯肉退縮が起これば歯肉が下がるため、歯肉に隠されていた歯の一部が露出します。

例えるなら、長袖の服を着ている人が袖をまくることで手首が見えるのと同じです。服の袖のせいで本来手しか見えないのが、袖をまくることで手首が露出する…これと同じ流れです。歯肉が下がることで歯の根…つまり歯根が露出してしまい、その分だけ歯が長くなったように見えるのです。

歯肉退縮が起こる理由

歯周病になると歯肉が炎症を起こしますが、その炎症はやがて歯槽骨にまで起こるようになります。そうすると、歯周病菌の出す酵素が歯槽骨を溶かしてしまい、歯槽骨が溶かされることでそれを覆っていた歯肉まで退縮してしまうのです。

さらに歯周ポケットの中で炎症が繰り返されると、歯肉に含まれるコラーゲンが減少していきます。コラーゲンは健康な肌を保つ上で重要ですが、それは歯肉にも言える問題であり、コラーゲンの減少は歯肉の高さを徐々に下げてしまう原因になるのです。

歯肉退縮によって起こる問題

歯肉退縮によって起こる問題は知覚過敏です。本来歯は刺激に対して非常に敏感で、触れることはもちろん、熱さや冷たさなどの温度ですら刺激となってしまいます。しかし普段そのような刺激はなく、それは歯の表面のエナメル質によって歯が保護されているからです。

歯肉退縮が起こると歯根が露出しますが、この歯根にはエナメル質がありません。このため露出した歯根は刺激に対して敏感な状態であり、少しの刺激で痛みやしみを感じてしまいます。つまり歯肉退縮が起こると歯根によって痛みやしみを感じるようになり、いわゆる知覚過敏が起こるのです。

歯肉の再生治療

歯肉は自然に再生しないため、歯肉退縮によって下がって歯肉は元にもどりません。元に戻すためにはそのための治療を行う必要があり、それが歯肉の再生治療です。正確には結合組織移植術と呼ばれる方法で、簡単に言えば歯肉の移植です。

主に上顎の奥歯の内側から歯肉を採取して、歯肉退縮が起こった部分に移植するのです。要するに充分に歯肉がある部分から、歯肉が不足している部分に歯肉を移植する方法であり、その治療方法から想像できるとおり治療において手術を行います。

歯周病の進行度

歯肉退縮が起こるということは、少なくとも歯槽骨が溶かされるほど歯周病が進行していることになります。このため、歯が長く見えた時にはすぐ歯科医院に行きましょう。加齢などの原因で歯肉退縮が起こることもありますが、それは診察してみなければ分かりません。

歯周病の可能性があり、なおかつその歯周病が進行している可能性があるわけですから、歯が長く見える自覚症状があった時には必ず歯科医院に行かなければなりません。仮に歯周病が原因だった場合、放置してしまうとさらに歯槽骨が溶かされて歯が抜け落ちてしまいます。

歯肉退縮のその他の原因

歯肉退縮の原因は歯周病だけではありません。次のことが原因で歯肉退縮が起こることもあります。

歯肉を切開した手術の後

歯周病治療などで歯肉を切開する手術を行った場合、術後に歯肉退縮が起こることがあります。これは手術によって歯肉がダメージを受けているからで、歯肉が薄い場合は特に起こりやすいです。

噛み合わせが悪い

特定の歯が慢性的に強く噛み合うと、その時に発生する力が歯肉への負担となります。そのため歯肉が影響を受けて歯肉退縮が起こることがあります。

歯磨きの仕方が悪い

問題となるのは、ゴシゴシと強く磨きすぎる歯磨きの仕方です。力を入れた磨き方が歯肉にとって刺激となり、それによって歯肉退縮が起こることがあります。

まとめ

いかがでしたか?
最後に、歯周病になると歯が長く見える理由についてまとめます。

1. 歯肉退縮 :歯周病の進行によって歯肉が退縮し、歯根が露出することで歯が長く見える
2. 歯肉退縮が起こる理由 :歯槽骨が溶かされることでそれを覆う歯肉も退縮してしまう
3. 歯肉退縮によって起こる問題 :露出した歯根にはエナメル質がないため、知覚過敏が起こる
4. 歯肉の再生治療 :結合組織移植術。充分に歯肉がある箇所から歯肉を移植する
5. 歯周病の進行度 :歯肉退縮が起こっている場合、歯周病は歯槽骨が溶かされるほど進行している
6. 歯肉退縮のその他の原因 :歯肉を切開した手術の後、噛み合わせが悪い、歯磨きの仕方が悪い

これら6つのことから、歯周病になると歯が長く見える理由について分かります。歯周病で歯が長く見えるのは、歯肉退縮によって歯根が露出したためです。

本来見えない歯根が見えるようになることで、その分だけ歯が長くなったように見えるのです。この状態になると、歯周病は歯槽骨が溶かされるほど進行していることになるため、実際にはもっと早い段階で歯周病に気づいて治療するのが理想です。